問題
今回は第65回診療放射線国家試験「X線撮影技術学」より上部消化管造影検査についての問題を解説していきます。
なお、問題文は厚生労働省HPより引用しております
午後80
上部消化管造影写真を示す。正しいのはどれか。
1. 前壁が抽出されている
2. 背臥位で撮影されている
3. 頭高位で撮影されている
4. 充盈法で撮影されている
5. 噴門部から穹窿部が抽出されている
解説
胃の基本解剖
ここでは胃の解剖と位置関係について図を使って解説します
<POINT>
- 穹窿部(胃底部)は背側にあり、背臥位ではバリウムは穹窿部にたまりやすい
- 十二指腸は胃の後方側を折り返すように走行する
撮影体位と胃の位置関係
体位と胃の位置関係については右手を用いて説明すると分かりやすいためそちらを採用して説明を進めていきます
<手の向きと胃の位置関係の前提>
- ⑴手背を胃の前壁、手掌を胃の後壁とする。
- ⑵背臥位では手背を上、腹臥位では手掌を上にする。
- 画像上:腹臥位はフィルム側に前壁、背臥位では後壁であるため各々を観察しやすい
- ⑶第一斜位は回外(時計回り)、第二斜位は回内(反時計回り)
- 背臥位、腹臥位にかかわらず⑶の向きは同じである
- ⑷頭低位は掌屈、半立位は背屈でバリウムの流れをイメージする
解法
今回は撮影体位と胃の位置関係について知識を深める記事です。問題文中に撮影法等の用語がありますがそちらに関しては別記事で解説いたします。
それでは、再び画像を見てみましょう
画像を見てわかるポイントをまとめます
- 幽門が椎体の右側に位置する → 腹臥位
- 胃体部が椎体に中心部に位置する → 正面像
- 造影剤が胃上部(穹窿部側)に存在する → 頭低位
以上より(個人差はありますが)撮影体位は腹臥位正面像であると予想できる。
では選択肢を見てみましょう
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1. 前壁が抽出されている
撮影体位は腹臥位である事から、前壁は観察可能である → 正解
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2. 背臥位で撮影されている
撮影体位は腹臥位である → 不正解
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3. 頭高位で撮影されている
穹窿部が胃底部とも言われている理由は臥位の状態で最も下に位置するからである。従って「頭低位である」と言い切るのはこの画像で難しいが半立位(頭高位)ではないことはわかる → 不正解
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4. 充盈法で撮影されている
ここでは省略するが充盈法は多くのバリウムを飲ませて胃の形状等を観察する方法である → 不正解
※なお充盈法は以前までの撮影法であり現在では二重造影法が主流となり数は減少傾向である
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5. 噴門部から穹窿部が抽出されている
噴門部の抽出は認められない → 不正解
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従って、正解は【1】になります
お疲れ様でした
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