計数率と標準偏差の関係

放射線計測学

今回の問題

今回は測定時間によって標準偏差の求め方が異なることについて面白い問題を見つけましたので一緒に考えていきましょう

問題

計数率100cpmの標準偏差はどれか。但し、測定は10分間とし、測定値はポアソン分布に従うものとする。

1. \(1\)

2. \(10\)

3. \(\sqrt{10}\)

4. \(100\)

5. \(\sqrt{100}\)

解説

測定方法と標準偏差

計測学を勉強していると「測定値はポアソン分布に従う」とよく見ることがあります。またポアソン分布においての測定値の標準偏差は\(\sqrt{平均値}\)でよく知られていますが計数率の標準偏差は測定時間によって計算方法が異なりますここでは問題文を例にしながら分かりやすく解説していきます。

以下、数値を合わせるために計数値を\(N\)、測定時間を\(t\)とします

単位時間 t 当たりの測定値を1標本とした場合

「単位時間」で測定した場合の標準偏差の求め方になります。

$$σ=\sqrt{\frac{N}{t}}$$

例題)1分間で100カウントの試料を1回測定した時の標準偏差は?

  • 測定法:「単位時間」
  • 測定値:100カウント(100カウント × 1回\(^{(※)}\)
  • 測定時間:1分(1分 × 1回\(^{(※)}\)

$$σ=\sqrt{\frac{100}{1}}=10$$

よって標準偏差は10になります。

\(^{(※)}\)ここで大事なのは測定法が「単位時間」であることであるため、「1回測定」の単語に引っかからないようにしましょう。また測定回数については複数回であれば合計値を式に代入します

測定時間 t を1回のみの測定値で1標本した場合

「測定時間\(t\)」で測定した場合の標準偏差になります。

$$σ=\frac{\sqrt{N}}{t}$$

例題)10分間を1回のみ測定した時の測定値が1000カウントである時の標準偏差は?

測定法:「測定時間 t 」←単位時間ではない
測定値:1000カウント(1000カウント × 1回)
測定時間:10分(10分 × 1回\(^{(※)}\)

$$σ=\frac{\sqrt{1000}}{10}=\sqrt{10}$$

よって標準偏差は\(\sqrt{10}\)になります

\(^{(※)}\)測定時間 t が存在する場合は必ず測定回数は1回になることも合わせて覚えましょう

解法

それでは本題に戻ります。問題文をおさらいしてみましょう

計数率100cpmの標準偏差はどれか。但し、測定は10分間とし、測定値はポアソン分布に従うものとする。

ここで測定時間について見てみると特に測定回数などは記載されず測定時間のみ“10分”とあります。これは(測定回数の記載がないので)10分の1回と読み解くことができます。

では求めていくために計数値を求めてみましょう。計数値も記載がないため計数率から元の計数値を導いていきましょう。問題文より測定時間が10分であり、計数率が100cpmであるため

$$計数率=\frac{計数値}{測定時間}$$

より計数値を\(N\)とすると

$$100=\frac{N}{10}$$

よって計数値N=1000と分かりますね

それでは標準偏差を求める作業に入っていきます

  • 計数値:1000カウント
  • 計数時間:10分

$$σ=\frac{\sqrt{1000}}{10}=\sqrt{10}$$

答えは\(\sqrt{10}\)であり選択肢は【3】になります

余談

一般的に標準偏差の公式といえば

$$σ=\sqrt{\left(\frac{\sqrt{N_a}}{t_a}\right)^2+\left(\frac{\sqrt{N_b}}{t_b}\right)^2}$$

と表しますがこれはバックグランドの影響を考慮しているためであり標準偏差の合成のような感じで2乗をしています(三平方の定理のように)。ですが、各々のカッコの中では\(\frac{\sqrt{N}}{t}\)で表されているのに疑問を感じませんでしたか?\(\sqrt{\frac{N}{t}}\)ではダメなのかと。

簡単にいうと測定の精度に関係するからです。測定時間が短いと誤差の範囲は大きくなります。ん?と思いますがこのような実務的な問題では精度を保つために測定時間を確保する必要があり、よく文章をみるとちゃんと測定時間 t で測定しています。

お疲れさまでした

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