電離箱線量計の性質⑴

放射線計測学

問題

今回は第65回診療放射線国家試験「放射線計測学」より電離箱線量計の性質⑴についての問題を解説していきます。

なお、問題文は厚生労働省HPより引用しております

問62

電離箱線量計について正しいのはどれか。2つ選べ

1. 一定強度のX線照射では気圧が高くなると電離電荷は増加する

2. 一定強度のX線照射では気温が高くなると電離電荷は増加する

3. 平行平板形電離箱は円筒形電離箱に比べて一般的に極性効果が小さい

4. パルスあたりの線量率が高くなるほどイオン再結合の割合は減少する

5. 同じ線量率では連続放射線はパルス放射線に比べてイオン再結合損失が少ない

基礎知識

ここでは計測環境及び放射線の出力方法によって電離電荷がどう変化するのかを理解しよう

測定環境と電離電荷の関係

一般的に測定環境(気温・気圧)によって密度がどう変化するのかを下図で確認しましょう

以下、まとめると

  • 気圧(高)→密度(大)
  • 温度(高)→密度(小)

ここで、密度と電離電荷について考えてみます

電離電荷というものは空気分子の放射線による電離によって生じます

従って、密度が大きくなるとその分だけ電離電荷は増加します。

放射線の出力方法とイオン再結合の関係

出力方法は大きく分けて「パルス放射線」と「連続放射線」に分かれます

パルス放射線とは「ピッ、ピッ、ピッ、、、」と離散的に

連続放射線とは「ピーーーーーーーーー」と連続的に

のイメージです

この二種類がイオン再結合にどのように関係するのでしょうか

まず、同じ線量率という条件下で比較してみましょう

パルス放射線では「放射線が出ている時間」と「出ていない時間」に分けられます

図の通り、パルス放射線は連続放射線と同等の線量率を保つためには「放射線が出ている時間」が「放射線が出ていない時間」を補わなければなりません

従って「放射線が出ている時間」は実際にはその瞬間で連続放射線と比較すると線量率は高くならないといけないのです

単位時間では線量率は同じであっても微小時間ではその線量は異なるのです

では線量率とイオン再結合にはどのような関係があるのでしょうか?

イオン再結合とは放射線によって電離したイオン対がその直後に再び結合する現象です

放射線が1本であるならばその確率は低いですが、多くなればイオン再結合の確率も高くなっていきます

「放射線の多い」ということは、すなわち「線量率が高い」ということになります

※イオン再結合は測定上、損失データになるので問いではイオン再結合損失という表現で説明されています

解説

それでは各選択肢についてみてみましょう

1. 一定強度のX線照射では気圧が高くなると電離電荷は増加する

正解:気圧(高)→密度(大)→電離電荷(増)

2. 一定強度のX線照射では気温が高くなると電離電荷は増加する

不正解:温度(高)→密度(小)→電離電荷(減)

3. 平行平板形電離箱は円筒形電離箱に比べて一般的に極性効果が小さい

不正解:極性効果とは、計測を陽極側・陰極側のどちらで測定するかで計測値が変化する現象。平行平板形は極性効果は大きい(別記事で解説)

4. パルスあたりの線量率が高くなるほどイオン再結合の割合は減少する

不正解:線量率(高)→イオン再結合(増)

5. 同じ線量率では連続放射線はパルス放射線に比べてイオン再結合損失が少ない

正解:パルス放射線は「放射線が出てない部分」を「放射線が出ている部分」で補う。そのため連続放射線に比べてその瞬間での線量が高い。パルス放射線:線量(高)→イオン再結合(多)。従って、連続放射線はパルス放射線よりもイオン再結合が少ない

以上より正解は【1】【5】になります

お疲れ様でした

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