今回は令和3年度第1種放射線取扱主任者試験「化学」より放射性核種の質量の求め方についての問題を解説していきます。
なお、問題文は原子力安全技術センターHPより引用しております。
問4
1GBqの\(^{140}\)Ba(半減期13日)の質量[g]は、これと過渡平衡にある\(^{140}\)La(半減期40時間)の質量[g]の何倍か。次のうち最も近い値はどれか
1. 0.15
2. 0.75
3. 1.6
4. 3.3
5. 6.8
解説
問題文の解釈とその解き方
問題文より求める問いは各核種の質量の比になり計算式で表すと以下のようになります
$$\frac{1GBqの^{140}Baの質量 }{^{140}Baと過渡平衡にある^{140}Laの質量}$$
上記の式より考える項目は
- 放射能と質量の変換式
- 過渡平衡状態にある娘核の放射能
になります。各々について説明していきます
放射能と質量の変換式
質量を求めるためには放射能の式(※)より算出することができます
$$A=λN=\frac{log_{e}2}{T}・\frac{N_{A}・W}{M}・・・(※)$$
ここで覚えて欲しい放射能と質量の変換式は
$$W[g]=ATM・2.4×10^{-24}$$
W(質量[g])、A(放射能[Bq])、T(半減期[s])、M(原子量[≒質量数])
単位は必ず気をつけてください!
文字式もATM(銀行のワード)で数字は24と2.4なので覚えやすいですよね!
過渡平衡状態にある放射能の関係
ここで求める計算式の分母に注目すると\(^{140}Baと過渡平衡にある^{140}Laの質量\)とは、すなわち\(^{140}La\)の質量のことであります。
ですが\(^{140}La\)の放射能は分からない為に「過渡平衡状態にある放射能の関係」より\(^{140}Ba\)1GBqから\(^{140}La\)の放射能を求めなければなりません。
過渡平衡状態にある放射能の関係(親核を「1」、娘核を「2」、半減期とTで表す)
$$\frac{A_2}{A_1}=\frac{T_1}{T_1-T_2}$$
となります。ですが、この式はあまりオススメしてなくて
$$\frac{N_2}{N_1}=\frac{λ_1}{λ_2-λ_1}$$
を覚えることをお勧めします。
オススメする理由(余談)
この式を少し変換すると(変換した形で覚える方が個人的にオススメ)
$$λ_1N_1=(λ_2-λ_1)N_2$$
前提として放射平衡が成立するとき、親核の方が半減期が長い為に\(λ_1<λ_2\)となります。このとき親核の半減期が長すぎると\(λ_1\)→0に近づきます(無視できるようになります)。これを永続平衡と言います。そうすると
$$λ_1N_1=(λ_2-0)N_2=λ_1N_1=λ_2N_2 (A_1=A_2)$$
より親核と娘核の放射能が等しくなります。そうゆう風に考えると過渡平衡では「親核の半減期は長いけど無視できるほどではない」とすれば\(λ_2-λ_1\)は簡単に理解できて無駄な暗記は減ると思います。
解法
色々遠回りしてしましました。本題に戻ります。
求める解は、
$$\frac{1GBqの^{140}Baの質量}{^{140}Baと過渡平衡にある^{140}Laの質量}$$
であり放射能と質量の式\(W[g]=ATM・2.4×10^{-24}\)でまとめると、Mと\(2.4×10^{-24}\)は約分して
$$\frac{W_{(^{140}Ba)}}{W_{(^{140}La)}}=\frac{10^9[Bq] ・(13[d]×24[h/d])}{A_{(La)} [Bq] ・40[h]}・・・(1)$$
ここで過渡平衡の式\(A_2[Bq]=\frac{T_1}{T_1-T_2}・A_1\)より
$$A_{(La)} [Bq]=\frac{13[d]×24[h/d]}{(13[d]×24[h/d])-40}・10^9・・・(2)$$
(2)式を(1)式に代入すると
$$\frac{W_{(^{140}Ba)}}{W_{(^{140}La)}}=\frac{13×24-40[h]}{40[h]}=6.8$$
従って求める解は解は6.8倍であり選択肢は【5】になります
お疲れ様でした
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