【X線装置】総濾過と線質の関係

画像機器/検査:X線

問題

今回は第74回診療放射線国家試験「X線画像機器学」より【X線装置】総濾過と線質の関係についての問題を解説していきます。

なお、問題文は厚生労働省HPより引用しております。

午前6

X線源装置の総ろ過を増加させたときの変化で正しいのはどれか

1. 半価層は薄くなる

2. X線量は少なくなる

3. 線質指標は低くなる

4. 実効エネルギーは低くなる

5. 被写体コントラストは高くなる

解説

連続X線の線質を知る

連続X線はX線分布が連続であります。

X線を学習する上で「連続X線は連続エネルギー(連続スペクトル)分布」は常識として知られていますがエネルギーが連続分布とはどういう事でしょうか

X線管球からはエネルギーが様々なX線が放出されます。但しエネルギーの最大値は管電圧によって決定されます

例えば100kVの管電圧から放出されるX線は最大値100keVですが、30keVも50keVも様々なエネルギーのX線が存在します

このように連続X線のエネルギー幅は広く存在するため大まかなエネルギー帯は「だいたい◯keV」、もしくは「単一エネルギーに置き換えたら◯keV」のような指標があると容易に評価することができます

この「だいたい◯keV」、もしくは「単一エネルギーに置き換えたら◯keV」のような指標を『実効エネルギー』と言います(※)

(※)厳密には、実効エネルギーとはもう少し複雑なものですが上記のような説明で理解しても問題はないと考えます

実効エネルギーはおおよそ最大エネルギー(管電圧)の1/3程度の値になります

ここで最大エネルギー(管電圧)に対しての実効エネルギーの比を線質指標と言います

$$線質指標=\frac{実効エネルギー}{管電圧}$$

線質指標のイメージは「設定エネルギー(管電圧)における実際のエネルギーの中央値的なもの(実効エネルギー)の割合」です

例えば、胸部撮影では肋骨陰影を陰影を透過させる為に高電圧を持ちいりますが、いくら管電圧が高くても低エネルギー成分は存在します。従って後述する付加フィルタなどを用いることにより線質指標を改善し良い画像を提供できます

X線装置の総濾過

総濾過とは「固有濾過+付加フィルタ」を表します

固有濾過とはX線装置を構成する部品によるものであり、いわゆるX線装置の自己吸収といったものです

付加フィルタを調整することによってX線の線質を調整します

X線装置から出る連続X線は高いエネルギーから低いエネルギーまで広いエネルギー帯が存在します

前述しましたが低エネルギー成分というのは画質の低下及び被曝の増加に繋がります

付加フィルタは低エネルギー成分の除去に貢献してくれます

ー補足:実効エネルギーが大きくなるとは?ー

実効エネルギーが大きくなるとは仮想的に管電圧が大きくなったと言えます

別の言い方をすると、低エネルギー成分が深さ方向でより除去されていくため半価層が厚くなっていきます(X線吸収の低下)。これをビームハードニングと言います(CTの方で用いる用語ですが原理は同じです)

解答

それでは各選択肢について考えていきましょう。問題を解く前提として問題文より「総濾過を増加させると」ということを念頭において解きましょう

1. 半価層は薄くなる

不正解:濾過(増)→低エネルギー成分(減)→半価層(厚)

2. X線量は少なくなる

正解:低エネルギー成分の減少分だけX線量は減少します

3. 線質指標は低くなる

不正解:実効エネルギーは大きくなる為線質指標も大きくなる\(線質指標=\frac{実効エネルギー}{管電圧}\)

4. 実効エネルギーは低くなる

不正解:低エネルギー成分減少により実効エネルギーは大きくなる

5. 被写体コントラストは高くなる

不正解:総濾過(増)→実効エネルギー(大)

【組織間での減弱が小さくなることからコントラストが低下する方向に向かう】

従って、求める答えは【2】になります

お疲れ様でした

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