コンプトン散乱の散乱角

放射線物理学

今回の問題

今回は令和3年度第1種放射線取扱主任者試験「物理学」よりコンプトン散乱の散乱角についての問題を解説していきます。

なお、問題文は原子力安全技術センターHPより引用しております。  

問21

1.02MeVのγ線が物質でコンプトン散乱を起こした場合、散乱光子と反跳電子のエネルギーが同じであった。この場合、散乱角として最も近い値はどれか。

  1. 30°

  2. 45°

  3. 60°

  4. 75°

5. 90°

解説

コンプトン散乱における基本公式

下図のようなコンプトン散乱を想定した場合以下の式が成り立つ

  1. $$ hν = hν’ + K $$
  2. $$hν’=\frac{hν}{1+\frac{hν}{m_{o}c^2}(1-cosθ)}$$

hν:入射光子

hν’:散乱光子

K:反跳電子

θ:散乱角

問題文の理解

この問題はコンプトン散乱においての散乱角についての問題です。

  1. 問題文より、散乱光子 hν’ =反跳電子 K を条件に基本公式⑴式を変形する
  2. 得られた関係式を基本公式⑵式に代入して散乱角θを求める

解法

問題文より、散乱光子 hν’ =反跳電子 K を条件に基本公式⑴式を変形する

反跳電子と散乱光子のエネルギーが等しい為 K = hν’ として基本公式⑴式に代入する

$$hν = 2hν’ $$

ここで計算しやすいように\(hν’ = \frac{1}{2}hν \)とする・・・(a)

得られた関係式を基本公式⑵式に代入して散乱角θを求める

(a)を⑵式へ代入して整理すると

$$hν’=\frac{1}{2}hν=\frac{hν}{1+\frac{hν}{m_{o}c^2}(1-cosθ)}$$

$$\frac{1}{2}=\frac{1}{1+\frac{hν}{m_{o}c^2}(1-cosθ)}$$

ここで両辺の分母に注目すると

$$2=1+\frac{hν}{m_{o}c^2}(1-cosθ)$$

これを計算すれば良い。

$$1=\frac{hν}{m_{o}c^2}(1-cosθ)$$

$$\frac{m_{o}c^2}{hν}=1-cosθ$$

$$cosθ=1-\frac{m_{o}c^2}{hν}$$

問題文よりhν=1.02MeV、\(m_{o}c^2\)は0.511MeVより

$$cosθ=\frac{1}{2}$$

よってθ=60°となり、選択肢は【3】になります

お疲れさまでした。

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