今回の問題
今回は第65回診療放射線国家試験「放射線生物学」よりα/βと放射線障害の関係についての問題を解説していきます。
なお、問題文は厚生労働省HPより引用しております
α/βが小さいのはどれか。2つ選べ。
1. 粘膜炎
2. 皮膚炎
3. 神経障害
4. 骨髄抑制
5. 筋肉萎縮
解説
α/βの基本的知識
α/β値とは細胞の生存率曲線の形を表しているものである
α/β値とは・・・
1粒子による二本鎖切断の発生率(α)と2粒子により二本鎖切断を起こす確率(β)が等しくなる時の線量をα/β値といい、単位を[Gy]で表す。
1粒子による二本鎖切断の発生率α\((∝ D )\)
2粒子により二本鎖切断を起こす確率:β\((∝ D^2 )\)
確率α及びβが等しくなる時の線量は
$$αD =βD^2$$
$$D=α/β[Gy]$$
α/βと放射線障害
LQモデルの特徴
低線量部に見られる“肩”と呼ばれる生存率が落ちない(放射線に対して抵抗性を示す)領域が存在する。
問題文よりα/βが小さい時を考える
α/βが小さい時は
- 低線量では放射線抵抗性 (肩の影響より生存率が落ちない)
- 高線量では放射線感受性(単位線量あたりの生存率の下落度が急である)
※低線量では肩のお陰で耐えられるがその代わり高線量(ある量以上)では許容できなくなる。と理解しましょう
ここで線量を放射線治療での“総線量”として考えると
α/βが小さいとは、『前半は耐えられるが、後半では耐えられない』と言い換えることができる。すなわち後半で放射線による反応が出やすい晩期反応型ということになる
問題文の理解・解法
さて、今までの理解の上で問題文をわかりやすく変換してみましょう
[問題文]α/βが小さいのはどれか。2つ選べ。
[変換後]晩期反応型の放射線障害はどれか。2つ選べ。
これで選択肢と問題文を繋げることができました。では晩期反応型の放射線障害とは何でしょうか。
晩期反応型とは『前半は耐えられるが、後半では耐えられない』でしたね。前半は耐えられるということは放射線障害に対するしきい線量が比較的高いものを選べば良いですね。すなわち放射線に対して感受性ではないものを選ぶのと同じになります。
一般的に放射線の感受性が高い障害は、リンパ・骨髄系疾患、○○炎のような炎症系疾患(全てには該当しない)が代表的な例になります。では、選択肢を見てみましょう。
1. 粘膜炎
2. 皮膚炎
3. 神経障害
4. 骨髄抑制
5. 筋肉萎縮
⑴⑵は炎症系なので感受性、⑷は骨髄系なのでこれも感受性ですね。なので、正解は【3】と【5】です。
[余談]
実際このようなくどい解き方ではなく「神経と筋肉は抵抗性」と解くのが一般的ですが時間があるのであれば一回はあえてこのように解くようにしましょう。こうすることで放射線生物学の各単元を紐づけることができより応用的な問題に対応できるようになります。
お疲れさまでした。
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